進化する糖尿病治療法

症状はなかったのに…「突然」のウソ 原因は過去にある

坂本昌也准教授(C)日刊ゲンダイ

 Aさんのケースでいえば、20代の生活による“負の遺産”が大きかったのでしょう。血管は、健康的な生活をしていても、年齢と共に硬くなります。負の遺産がある人は、早い段階で血管が硬くなっている可能性が高い。もともと血管が硬いところからスタートすれば、その後に規則正しい生活に変えたとしても、よほど気を付けていなければ、ほかの人より心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高くなってしまうのです。

 私がよく例えに出すのは、花粉症の例えじゃないですが、コップに入った水です。コップに水がなみなみと入っている人と、少ししか入っていない人がいる。前者は負の遺産を抱えている人で、後者はそうでない人です。水が少ししか入っていない人は、1滴の水が加わったところで大したことがありません。それこそ“たった1滴”で済む。一方、水がなみなみと入っている人は、1滴水が加わるだけで、水があふれ出してしまう。“たった1滴”ではないのです。

 過去にむちゃくちゃな生活をしていた人は、自分は水があふれ出しそうな状態だと自覚した方がいい。その上で一層気を引き締め、生活改善に臨むべきなのです。

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坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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