心と行動を変える健康革命

新型人間ドック「ライフデザインドック」従来型との違いは

性格や運動機能分析も重要に
性格や運動機能分析も重要に(C)日刊ゲンダイ

「医師は患者さんの伴走者でありたい」――。

 医学研修生時代からこうした信念を堅持してきた東京慈恵会医科大学の横山啓太郎教授(腎臓・高血圧内科)はこの4月、傘下の「慈恵医大晴海トリトンクリニック」(東京・中央区)の所長に就任、「ライフデザインドック」を本格スタートした。

 新型人間ドックは従来の検査項目に性格や運動機能の分析を加え、受診者に合った生活指導を行う。狙いは、寝たきりの原因となるサルコぺニアやロコモティブシンドロームの予防である。

「従来の人間ドックは現役世代が心筋梗塞や脳卒中などを起こさないことが目的でした。しかし、今後は80歳くらいまで働けて、90歳でもゴルフや旅行を楽しめることが目標になります。それを実現するには受診者自身が積極的に寝たきり防止に取り組む新たな人間ドックが必要なのです」

 本院で国内初の生活習慣病に対して行動変容を促す「行動変容外来」を開設した横山教授は、病気に立ち向かおうとしない患者に手を焼いてきた。

 横山教授が担当する患者さんに、Aさんという「生活習慣病」治療中の中年男性がいた。

 週に1回通ってもらい、3年が経過していた。Aさんの体重は101キロ。肥満は、生活習慣病の元凶である。当然、体重の減量を指導した。だが、3年間で減らした体重は1キロに過ぎなかった。禁煙指導もしたが、喫煙本数も指導を開始した3年前と大差ない。横山教授は、“私の指導は無駄だったのか”と落胆し、Aさんにこう質問したという。

「医師の指導時間は5分と1分とで、どちらがいいですか?」。Aさんは「1分の方がいい」と即答した。

「それなら、どんな医師なら5分間の指導を聞く価値がありますか?」と聞いたところ、Aさんは、「みのもんたさんのような医師なら」と、笑顔で答えたという。

 当時、朝のワイドショーの人気司会者だったみの氏は病気が気になる視聴者を“その気にさせる”ことに熱心だった。

 横山教授は、医師は病気のリスクを教えるが、病気克服の「やる気」までは教えていなかったことに初めて気がついたという。

 これが学習理論や行動理論に基づき、患者や受診者の行動を変える「行動変容外来」や「ライフデザインドック」立ち上げの発火点になったという。

「患者が健康のために心を変え、行動を起こすキッカケにならない健診は意味がありません」

横山啓太郎

横山啓太郎

1985年東京慈恵会医科大学医学部卒。虎の門病院腎センター医員を経て現在、東京慈恵会医科大学教授。同大学晴海トリトンクリニック所長。

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