後悔しない認知症

認知症の進行と関係 聴力と視力の衰えには積極的な対応を

コミュニケーションをとるためには補聴器の使用も(C)PIXTA

 老化による聴力の衰えを改善することはむずかしいが、進行を遅らせることは可能だ。親に耳鼻科を受診させ、場合によっては補聴器の使用を考えたほうがいい。聴力の衰えはさまざまな問題を引き起こす。「正確なメッセージが伝わらない」「聞き間違いによるトラブルが生まれる」「本人も周囲も話す時の声が大きくなる」などだ。ほとんどの人間は声が大きくなると、本人の感情とは関係なく、声のトーンは怒りのニュアンスを帯びる。笑顔のまま大声で怒るパフォーマンスが可能な俳優の竹中直人さんとは違うのだ。耳の遠い親と声の大きな子どもの会話はしばしば親子ゲンカのようになってしまう。となると、親子ともども会話がおっくうになり、次第にコミュニケーションの機会が減る。やがて「どうせ、わかってくれない」となり、親子関係に深い溝が生じてしまう。

 高齢者にとって補聴器は老いの象徴のように思えて、抵抗感が強いかもしれない。子どもは「もっと話がしたい」「わかり合いたい」という気持ちを伝えて優しく諭してみることだ。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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