心と行動を変える健康革命

全科目満点は目指すな モチベーションはビリギャルに学ぶ

まずはワクワクした目標を
まずはワクワクした目標を(C)日刊ゲンダイ

 4月から「ライフデザインドック」を本格スタートした「慈恵医大晴海トリトンクリニック」。その所長である横山啓太郎同大教授が始めたのは、患者の「マインド」(考え方、姿勢)や「やり方」(取り組み)を診療の基軸にすることだ。

 例えば血圧が少し高くなったといっても、高血圧の初期症状は風邪や腹痛と違い、高熱や痛みなどはほとんどない。

 患者は「もう少し後でも治療は大丈夫」と思い込み仕事や生活を優先させてしまう。その間に心筋梗塞や脳梗塞などの重大病がジワジワ進行し、手遅れになるケースが多かった。

 病気克服にやる気を見せない患者を奮い立たせるため、横山教授の頭に浮かんだのは「ビリギャル」の受験法だった。

「中高時代の成績がビリだった女の子が、たった1年間で偏差値を40も上げ、慶応大学に現役入学ができたビリギャルの受験法には、やる気のない患者さんの行動を変える方法があるのではないか、と思ったのです」

「ビリギャル」とは、名古屋に住む実在の女子高生のこと。

 中高時代は両親に歯向かう金髪ギャルで、成績はビリ。高校2年生のときは小学4年生ぐらいの学力だったという。

 それが、大学受験を志して塾で猛勉強。小学校の勉強から始めて現役で慶応大学に合格した。

 この実話は「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」(角川文庫)として出版され100万部のベストセラーとなり、映画にもなった。覚えている人もいるだろう。

「まずはワクワクした目標を立てることです。『ダイエット』や『生活習慣病の治療』も、がむしゃらにやるだけでは効果は望めません。受験と同様、長期間のチャレンジになるため、モチベーションを維持できる目標が必要です」

 ビリギャルの志望校は慶応大学だった。理由は「イケメンがいそう」だったから。周りからすれば変わった動機かもしれないが、心が浮き立つようなこの目標が猛勉強の原動力になったという。

「今は高血圧で具合が良くないが、体調を整えて80歳で海外旅行に行く、70歳で彼女をつくるなど、想像するだけでワクワクできるような目標を立てるといいでしょう」

 ただし、それを達成するには自身の性格や能力を熟知した上で、計画を立てる必要がある。

 ビリギャルが慶応大学を志望校にしたもうひとつの理由は、私大受験なら3科目の勉強で済むからだろう。国公立大学を目指して9科目すべてに高得点を取ろうとしたら失敗していたかもしれない。

「全員が血圧、血糖値、尿酸値などすべての検査項目で好成績を狙う必要はありません。ポイントとなる指標をクリアすればいい。大事なのは目標を達成するためのマインドや日々の取り組み方を私たち医師らと共有し、チームで立ち向かうことです」

 ビリギャルも塾の先生をはじめ母親ら家族と目標を共有することで成功した。

「チームなら途中で挫折する確率は低くなります」

横山啓太郎

横山啓太郎

1985年東京慈恵会医科大学医学部卒。虎の門病院腎センター医員を経て現在、東京慈恵会医科大学教授。同大学晴海トリトンクリニック所長。

関連記事