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昔の病気を蘇らせ流行させるアンチ・ヴァクサーとは?

予防接種反対デモに参加者には妊婦も…
予防接種反対デモに参加者には妊婦も…(C)ロイター

 前回、はしかの大流行について紹介した時、予防接種を受けない子供たちが流行を悪化させていると触れました。宗教的な理由以外に、親が「予防接種は自閉症の原因になる」などと信じており、子供に受けさせないのです。

 こういった親は、「アンチ・ヴァクサー(anti―vaxxer)」と呼ばれ、「すでに排除されつつある病気を蘇らせている」という危惧が高まっています。一方でアンチ・ヴァクサーたちが過激化し、ほかの親をSNSなどで攻撃するケースも報道されています。

 CDC(米疾病対策センター)によると、アメリカの子供たちは通常MMR(麻疹・おたふく風邪・三日麻疹)、B型肝炎、水痘などの予防接種を受けます。しかし、2歳以上でこれらを受けていない人の割合は、2011年の0.9%から、15年の1.2%に増加しました。

 それに対し、はしかは14年に続き、今年は患者300人を超えて大流行の兆しです。また、おたふく風邪の患者は1990年代には毎年数百人程度だったのが、16年には6000人に跳ね上がり、昨年18年には3000人という患者数が報告されました。

 さらに、アメリカ国内にとどまらず、日本を含む世界各地で散発的に起きている流行の多くは、予防接種を受けない人が移動することにより広がっていく恐れがあると、警告する声もあります。

 こうした中、CNNが報道したのは、インフルエンザで幼い息子を失った親がアンチ・ヴァクサーたちに攻撃されたという驚きのニュースです。フェイスブックに「おまえの子供が死んだなんてウソ。そんな子供は、もともといなかった」「おまえが殺したんだ」「予防接種のせいで死んだのだ」などというメッセージを次々に書き込まれたということです。子供を亡くした親が予防接種を奨励しないように黙らせるのが目的だろうと推測されています。

 アンチ・ヴァクサーの団体は「非常に過激な一部の仕業」とコメントしているようですが、予防接種をめぐる論争はとどまるところを知りません。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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