今回の旬の食材はあさり。あさりの旬はちょうど今ごろ、春先3月から4月である。それはあさりが初夏の産卵に備えて身の部分にしっかりと栄養を蓄積しはじめる時期が今だから。ぷっくりとした身が貝殻の中に目いっぱい詰まることになる。あさりにはオスとメスがあり、夏前、海水温がもう少し高くなるとそれぞれ卵子と精子を放出する。両者は水中で受精、あさりの赤ちゃんが生まれる。その前にいただいてしまうのだからまずは感謝が必要、資源の保護のための計画漁業も必要となる。
日本の各地に貝塚遺跡が点在するとおり、縄文時代の昔から日本人はこの自然の恵みを利用してきた。あさりのもうひとつの面白さは貝殻模様の千差万別さ。これは遺伝子が決めているのではなく、あさりの個性による(貝殻成分と色素分泌の兼ね合い)。そしてあさり独特の海の風味はコハク酸による。化学的に見るとコハク酸はジカルボン酸という物質で、昆布だしのグルタミン酸と同じ仲間のうま味成分である。砂抜きの際、蜂蜜を数滴垂らしておくと、コハク酸がさらに合成されうま味が増す(コハク酸は糖から作られる)。
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