Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

年内実用化へ がんを消す「光免疫療法」驚きの効果と問題

腫瘍の場所がネック(C)日刊ゲンダイ

 日本では、国立がん研究センター東病院で再発頭頚部がんに対する臨床試験が行われていて、好ましい結果が出ていると聞きます。東病院では、近く食道がんを対象とした臨床試験もスタートする予定です。

■腫瘍の場所がネックに

 注目の薬剤は、「ASP―1929」と呼ばれる物質。近赤外光線に当たると反応して、熱を発する性質があります。がん細胞のみに結合する抗体に、その仕組みを持たせ、注射で体内に入れ、ランプや内視鏡などで近赤外光線を当てると、化学反応の熱によってがんだけが死滅するのです。正常細胞に害を与えることはありません。

 この薬剤が結びつく受容体はEGFRで、頭頚部がんのほか、肺がんや乳がん、大腸がん、食道がん、膵臓がんにも存在します。

 理論上は、これらのがんにも効果があるはずで、全身のがんの8~9割は光免疫療法の対象になるといわれています。

2 / 3 ページ

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

関連記事