Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

年内実用化へ がんを消す「光免疫療法」驚きの効果と問題

腫瘍の場所がネック(C)日刊ゲンダイ

 先駆け審査の対象になった翌9日には、がんの10年生存率が発表されました。2002年からの4年間にがんと診断された約7万人が対象で、全体では昨年を0・8ポイント上回る56・3%。早期の大腸がんや乳がんは9割を超え、前立腺がんは100%。

 肺がんは早期なら64・5%ですが、4期だと2・7%。難治がんといわれる膵臓がんは早期でも29%で、4期は0・6%に下がります。光免疫療法は、数値が良くない肺がんや膵臓がんへの効果も期待されていますから、今後、数値は改善されるでしょう。

 しかし、問題点がないというわけではありません。光は無害ですが、届く範囲が限られています。皮膚に近い表在性腫瘍に限られているのは、そのためです。内視鏡で照射するにせよ、消化管から遠いと難しい。

 光を放射線に替えると、その点は解決されますが、被曝などの問題が生じます。当面、がんができた場所がネックになりそうです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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