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長引く咳に多くの病気リスク 見極めは肺活量と薬の効き目

長引く咳には見逃してはいけない病気も
長引く咳には見逃してはいけない病気も(C)日刊ゲンダイ

 熱はひいたのに、咳が止まらなくて……。このところの寒暖差で、風邪で受診される方が目立ちます。咳だけ残るという方が少なくありません。痰が絡んだような湿った咳ではなく、乾いた咳です。慢性の乾いた咳だと、胸部X線検査で異常がないことがほとんど。ほかの検査を追加することが必要です。

 風邪はウイルスや細菌が気道などに感染して炎症が起きた状態。ウイルスなどがいなくなっても、炎症が残って長引くことがあるのです。風邪の診断に間違いがなければ、適切な薬を追加すれば良くなりますが、問題はそうではないケース。

 風邪の後に乾いた咳を起こしやすい典型が、咳喘息です。喘息のようにぜーぜーしたり、呼吸困難を伴ったりしません。症状は咳のみで、深夜から早朝に頻発するのが特徴で、日中は会話や運動の後などに見られます。乾いた咳が8週間以上続く場合は、咳喘息の可能性が高いでしょう。

 長引く咳には、肺がんや結核など見逃してはいけない病気がありますから、これらとの見極めが重要。そのために重要なのが、肺活量検査のスパイロメトリーです。

 肺活量検査では、最初の1秒間に全体の何%を吐いているか調べる項目があって、1秒率といいます。70%以上が正常ですが、これが下回ると、咳喘息が疑われます。X線に異常がなく、1秒率が低下していれば、咳喘息でしょう。

 風邪が治っても、気道が敏感な状態が続いていることがあります。そうすると、冷たい空気やほこりを吸ったことなどをキッカケに再び気道が炎症を起こし、咳が出やすくなるのです。

 咳喘息は、喘息とは違いますが、2~3割は喘息に移行するといわれます。喘息になると、発作的な呼吸困難に襲われますから、咳喘息のうちにしっかり治すことが大切です。

 咳喘息と似たような病気にアトピー咳嗽があります。乾いた咳が主な症状で、ぜーぜーや呼吸困難はなし。見極めの決め手は、採血して調べるアレルギー検査です。

 もうひとつは薬の効き目。咳喘息は、喘息に移行する可能性が否定できず、喘息と同じように気管支狭窄が少なからずあるため、気管支拡張薬が効きます。アトピー咳嗽はそうではなく、気管支拡張薬が効きません。

 3つ目が胃食道逆流症です。胃酸が逆流することで食道が荒れて咳が出たり、ゲップや胸やけを生じたり。消化器症状を伴うことが多く、検査の決め手は胃カメラです。

梅田悦生・赤坂山王クリニック院長

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