天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

術後20年を考えると「グラフト」はやはり動脈が優れている

順天堂大学医学部付属順天堂医院の天野篤院長(C)日刊ゲンダイ

 今年2月、そうしたバイパスに使うグラフトを検討した研究が海外で報告されました。多枝冠動脈病変(複数の冠動脈が詰まっている)があり、冠動脈バイパス手術を行う患者において、「両側内胸動脈グラフト(動脈+動脈)」と、「片側内胸動脈グラフト(動脈+静脈)」の長期予後を検討したところ、10年後の全死因死亡率に有意差は認められませんでした。

 2016年に報告された5年後の死亡率でも両群に差はなく、今回の10年後も同じ結果だったということになります。ただ、この報告だけで「バイパスに使うグラフトは動脈も静脈も変わらない」と判断するのは間違いです。

 経験上、術後10年では両者にそれほど大きな差は出ません。しかしこれが20年になると、バイパスのグラフトに静脈を使った患者さんは再治療が必要になるケースが多くなります。静脈はやはり耐久性が劣っているのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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