耳鳴りめまい難聴…聴神経腫瘍かも

「術中神経モニタリング」と手術経験100例が医師選びの鍵

写真はイメージ
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 手術で聴神経腫瘍は取り除けたが、神経を傷つけて顔面神経麻痺(まひ)が残ってしまった……。これでは治療がうまくいったとはいえません。顔面神経麻痺のリスクを、限りなくゼロに近づけるために必須なのが、「術中顔面神経モニタリング」です。

 当科では、顔面機能保存のため、3種類の顔面神経モニタリングを行っています。この中でも「持続顔面神経モニタリング」は最も重要と考えています。持続的に顔面神経に刺激を与えながら、その反応が落ちないかを連続的に見るのです。

 反応が落ちた瞬間に手を止めれば、大事には至らない。顔面神経が障害されてから、「障害されていた」と確認していては遅いのです。もう元に戻すことはできませんから。

 聴神経腫瘍手術の経験数が多い医師なら、この方法の重要性は理解できるはずですが、実際に導入している施設はごくわずかです。手術の頻度が少ないことや、医師と技師、両方の能力を高めなければならないというハードルがあるからでしょうか。良好な手術成績を収めるには、医師の聴神経腫瘍の手術経験数も大きい。

 術中顔面神経モニタリングを確認していても、「取ろうとすれば全摘できるが、顔面神経麻痺を起こすかもしれない」といった、思った以上に難しい状況に当たることは、しばしばあるからです。

 進むか、戻るか……。その時にモノをいうのが、経験数なのです。こういう難しい聴神経腫瘍の手術で正しく判断できるには、少なくとも50~100例の手術件数が必要だと考えています。言い換えれば、100例をこなして初めて、聴神経腫瘍の手術において一人前と言えるのです。

 聴神経腫瘍の手術を受ける際は、持続顔面神経モニタリングを行っているか、そして主治医の手術の経験数はどれくらいかを、確認すべきです。

河野道宏

河野道宏

東京医科大学病院脳神経外科主任教授。聴神経腫瘍・小脳橋角部腫瘍・頭蓋底髄膜腫手術のエキスパート。

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