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【まるごとロールキャベツ】"天然の胃薬”のうま味と甘味

丸ごとロールキャベツとホタルイカのさっと炒め
丸ごとロールキャベツとホタルイカのさっと炒め(C)日刊ゲンダイ
旬の恵みを味わう<3>

 胃酸の過剰な分泌を抑え、胃の粘膜を保護したり修復したりする作用のあるビタミンUは、キャベツから発見されたことから別名キャベジンともいいます。

 天然の胃薬ともいうべきキャベツは、他にビタミンC、ビタミンK、カルシウムなどさまざまな栄養素を含んでいます。

 いまが旬の春キャベツを丸ごといただけるのが今回のメニューです。

 通常のロールキャベツであれば、実際に食べるのは1個か2個。使うキャベツの葉はせいぜい1枚か2枚ですけど、これなら4分の1個分くらいはペロリと食べられるのではないでしょうか。

 この時季のキャベツは巻きが甘いため、葉と葉の間にもフィリング(詰め物)が入りますし、チキンスープで煮ることによってキャベツのうま味がさらに増します。スパイス類もキャベツの甘味を引き出してくれます。

 出来上がったら熱々のスープとともにいただきます。マスタードを添えるとそれがアクセントになって、キャベツやスープのうま味や甘味はいっそう引き立ちます。塩分控えめでも十分、おいしく味わえるのです。

 調理のポイントはフィリングの食感を出すこと。ひき肉は使わず、豚の肩ロースを角切りに。一緒にまぜるキャベツのざく切りは水切りをするだけで、火は通しません。こうすることによってフィリングの食感も楽しめます。

《材料》
◎春キャベツ  中1個
A……にんにく(みじん切り)小さじ1 オリーブオイル大さじ1
◎玉ねぎ(みじん切り) 1個分
◎豚肩ロース肉塊 200グラムを1センチ角に切る
B……セミドライトマト(みじん切り)大さじ2 アンチョビー(同)大さじ1 ナツメグ、クローブ、タイム各小さじ4分の1 塩小さじ1 白コショウ
C……パン粉4分の1カップと卵1個をよく混ぜたもの
◎薄力粉 適宜
◎ローリエ 1枚
D……チキンスープ3カップ 白ワイン大さじ3
E……塩、白コショウ 少々

《作り方》
(1)キャベツのお尻から3センチの部分を水平に切り落とす。キャベツの上部、外側4センチを残し中の部分をスプーンなどで約2カップ分くりぬく。くりぬいたものをざく切りにし、塩小さじ2分の1と合わせて10分置き、水気をしっかり絞る。
(2)フライパンにAを入れて中火にかけ、玉ねぎをしんなりするまで焦がさないように炒めたら、粗熱を飛ばしておく。
(3)ボウルに②、豚肩ロース、B、Cを合わせて粘りが出るまでよく混ぜる。これに①を加えて混ぜる。
(4)キャベツの内側に茶こしを通した薄力粉を糊がわりに振り、③を少量ずつ入れ、スプーンの背などで押しながら空気を抜く。2、3センチ盛り上がるくらいに形作り、上にローリエをのせたらタコ糸で崩れないように形を整えて縛る(写真)。
(5)深めの鍋に④を入れDを加え蓋をして、沸いてきたら、弱火にして約20分間煮る。スープの味見をしてEで調える。
(6)タコ糸を外して切り分け、スープとともにいただく。好みでマスタードを添えるといい。

(松田美智子)

春キャベツの葉にはたっぷりの糖分も
春キャベツの葉にはたっぷりの糖分も(C)日刊ゲンダイ
抗がん作用のあるイソチオシアネートが豊富

 春に収穫されるのが春キャベツ。冬キャベツに比べ、巻きがゆるやか、葉が軟らか、中の方まで色がついている、といった特徴を持つ。昭和に育った私にとってロールキャベツは洋食の王様。特別な日のごちそうだった。

 それにしてもロールキャベツはどうしてキャベツであって、白菜やレタスではないのか。それはキャベツが独特のさわやかな甘味を持っているからだ。だから子供も大人もキャベツが大好き。収穫したての春キャベツの葉にはたっぷりの糖分が含まれている。中まで色がついているのは、それだけ光合成(太陽光を利用して糖をつくり出す究極の自然エネルギー反応)が盛んな証拠。そしてもうひとつの美点。キャベツはアブラナ科の植物。黄色い可憐な花を咲かせる。ケールやブロッコリーとも親戚だ。アブラナ科の植物はイソチオシアネートという抗がん作用を持つ成分を豊富に含む。なので旬の春キャベツを使った熱々のロールキャベツは、見てよし、食べてよし、健康にもよし、と三拍子そろった素晴らしいメニューなのだ。もちろんビールにも合う。

(福岡伸一)

▽福岡伸一(ふくおか・しんいち) 1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。

▽松田美智子(まつだ・みちこ) 女子美術大学非常勤講師、日本雑穀協会理事。ホルトハウス房子に師事。総菜からもてなし料理まで、和洋中のジャンルを超えて、幅広く提案する。自身でもテーブルウエア「自在道具」シリーズをプロデュース。著書に「季節の仕事」「調味料の効能と料理法」など。

※この料理を「お店で出したい」という方は編集部(froufushi@nk-gendai.co.jp)までご連絡ください。

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