進化する糖尿病治療法

糖尿病の「基準値以下」でも心筋梗塞や脳卒中を起こす人は

東京慈恵会医科大学の坂本昌也准教授(C)日刊ゲンダイ

 糖尿病の基準値が厳しくなれば、かなりの人が糖尿病と診断され、かえって糖尿病に対する認識が甘くなる可能性があります。実際、40代以上の男性はメタボ健診をすると7割の人が引っかかるのですが、それゆえにハードルが低くなってしまい、「メタボって言われたけど、大したことがない」と間違った知識を持っている人が多い。読者の皆さんもそうではありませんか? そうして、メタボに至った同じ生活を今後も続け、やがては糖尿病をはじめとする生活習慣病で治療が必要になったり、最悪の場合は、心筋梗塞、脳卒中を起こしてしまうのです。

 ガイドラインは、何十年間にわたるデータを利用して作っています。今のガイドラインの内容は、現在の人の食生活を反映したものではなく、過去の人の食生活を反映したもの。しかし、10年前、20年前から、食事や生活様式は大きく変化しています。

 当時のデータでは、空腹時血糖が126㎎/デシリットル以上、ヘモグロビンA1c7%以上を糖尿病とするのがベターだと考えられたのですが、今のリアルな食生活なら、もしかしたら数値をもっと低くすべきかもしれません。

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坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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