平成29年の国民健康栄養調査の実際のデータを見てみましょう。75歳以上の男性で炭水化物の割合が61.3%、脂肪が23.7%です。それに対して20歳代ではそれぞれ56.5%、29.2%となっています。この変化については、いろいろな考え方があります。
パッと思いつくのは、年を取るにつれて、炭水化物を取る割合が増え、脂肪を取る割合が減るのだという解釈です。しかし、そう結論するには、今の高齢者が若かった時にどんな食事をしていたかを調査する必要があります。平成29年の調査では今の若者との違いを見ているだけで、年齢の影響による変化と結論することはできません。
それではさらに別の説明はできないでしょうか。例えば昔の人は炭水化物の摂取割合が高く、最近の人は低いという説明はどうでしょうか。摂取割合の変化は加齢に伴うものではなく、世代の違いによるというものです。もちろんこの説明も仮説に過ぎません。ここでも今の高齢の世代が数十年前に同じように炭水化物の摂取割合が高かったというデータが必要です。ただ、実際の食生活の変化を思い浮かべれば、昔はてんこ盛りのご飯に、みそ汁、おかず一品というのが一般的だったとすれば、この説明のほうが正しいかもしれません。
いずれにしても重要なことは、同じデータを眺めても、その解釈は多様であるということです。さらに、どの解釈が正しいかを見極めるのは簡単なことではないのです。
若い人を見習って炭水化物を減らして、脂肪を取れば若返ることができるという意見は、この2つの仮説のさらにその先のはっきりしない仮説に過ぎないのです。
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