子宮体がん手術 ロボットor腹腔鏡でメリット大はどっち?

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 子宮体がんのロボット手術が保険適用になって1年。現在の治療の主流は? NTT東日本関東病院産婦人科・近藤一成主任医長に聞いた。

■保険適用になって1年

 早期子宮体がんの治療の基本は手術だ。長らく行われてきたのが開腹手術だが、2014年に腹腔鏡手術が保険適用となり、主流になった。

「当院ではその前から腹腔鏡手術で子宮体がんの手術を行ってきました。ロボット手術は17年から。ロボット手術が保険適用になった今は、早期子宮体がんの手術はロボットが中心です」(近藤医長=以下同)

 腹腔鏡手術とロボット手術は、どちらも腹部にミリ単位の穴を複数個開けて切ったり縫ったりする道具(鉗子)を入れ、がんを取り除く。従来の開腹手術では45センチほどの皮膚切開が必要だったので、出血量、合併症、入院日数いずれにおいても、腹腔鏡手術とロボット手術は患者の負担を大幅に軽減した。

 では、腹腔鏡手術とロボット手術を比較するとどちらがいいのか?

「切開する穴の大きさも変わりませんし、出血量、合併症、入院日数もどちらも同じくらいです。腹腔鏡手術よりもロボット手術が優れている点は、ひとつはモニターの違いです」

 腹腔鏡手術は2次元モニターであり、ロボット手術は3次元モニター。後者の方が見え方がクリアなので、安全に手術が行われる。また、腹腔鏡手術の鉗子は先端が固定されており、細かな手術に高度な技術が必要だが、ロボット手術では鉗子の先端が人間の手の可動域以上に動く。近藤医長の経験からは、腹腔鏡手術の修練に要する半分くらいの期間で、ロボット手術を一人前にこなせるようになるという。

■術者の負担減が患者のメリットにつながる

 しかし何よりロボット手術にメリットがあると指摘するのは、術者の負担の軽減だ。

「子宮体がんの手術は腹腔鏡、ロボットともに3~4時間かかります。腹腔鏡は立ちっぱなしで、ロボットは座って行える。術者の負担が軽減するということは、それだけ手術に集中しベストの力を発揮できる。結果的に患者さんのメリットになると考えています」

“開腹時代”から大きく前進した子宮体がんの手術法だが、患者側に子宮体がんの正しい知識がなければ、せっかくの恩恵を受けられない。

「患者さんの中には、もっと早く受診していれば早期発見ができて、ロボット手術のような負担が少ない治療が受けられたのに……という人もいるのです。子宮体がんは早期発見され、Ⅰ期の状態でがんを取り除けられれば、5年生存率は95%以上と予後がいい。チャンスをみすみす逃してしまう患者さんがいるのは、医療者として残念です」

「手術が不可能」というのは、がんの転移が見られる、腹膜内にがんが散らばった腹膜播種がある、といった状態で、がんをすべて取り除くことができない。抗がん剤などの治療が必要になり、基本的に「完治」を目指せる可能性が下がる。

 早期発見のために、必ず押さえておきたいのが「不正出血があったらすぐに産婦人科で検査を」ということだ。

「閉経後は不正出血をすることがありませんし、閉経前でも月経時以外に不正出血があれば、何らかの異常を疑うべき。不正出血の段階であれば、子宮体がんは早期発見の可能性が高い」

 前述の「もっと早く受診していれば」という患者には、この不正出血を半年や1年以上放置していた……という人もいる。

 読者の中には「子宮がん検診を受けているから問題なし」と思っている人もいるだろう。子宮がんとは「子宮体がん」と「子宮頚がん」の総称だが、子宮がん検診といわれているものは、実は子宮頚がん検診のこと。

「子宮体がんは検診では正診率が子宮頚がんに比べ低く、一般には行われていません。“検診を受けているから問題なし”とはならない。やはり不正出血があったら、原因を調べてください」

■ロボット手術を受けられない人

 早期子宮体がんが対象だが、緑内障や脳動脈瘤(りゅう)がある人は、眼圧や脳圧が上がるリスクがあるためロボット手術は受けられない。

関連記事