後悔しない認知症

臨床的にも有効 自分で生きることが認知症の進行を遅らせる

 何でもやってもらえる同居や介護施設に比べて「できるだけ自分の頭や体を使う機会」が多い一人暮らしのほうが、認知症の進行を遅らせるためには有効なのだ。

 また、「機嫌よく生きられる」要素もある。まわりに古くからの友人や知人がいれば、自分をいたわってくれたり、困ったときには面倒を見てくれたりする。当然、コミュニケーションの機会も増えるから、さまざまな情報の入力、出力も行われる。

■親の一人暮らし=危険・不幸ではない

 たとえ認知症であるにしても、親は親なりにコミュニティーの中で人間関係を築き、自分なりのライフスタイルを維持しながら生きているのだ。子どもはそれを忘れてはならない。

 たしかに、同居したり、介護施設に入居させたりすれば、子どもは安心感を得られるかもしれない。だが、親は円滑な人間関係、住み慣れた環境を捨て、新たなスタートを余儀なくされる。子どもの安心感と引き換えに親は「機嫌よく老後を生きること」を手放すことになりかねない。こうした変化が逆に認知症の症状を進行させてしまうかもしれない。もちろん、「子どもに迷惑をかけたくない」という親の思いも尊重すべきだ。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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