市販薬との正しい付き合い方

市販品でどうにか…でも薬の選択や見極めが難しい場合も

薬店で購入できるAGA用剤はシャンプーなどの外用剤のみ
薬店で購入できるAGA用剤はシャンプーなどの外用剤のみ(C)日刊ゲンダイ

 これまで、一般の薬店で購入できる市販医薬品(OTC医薬品)の中でも、「スイッチOTC」を中心に紹介してきました。もともと医療用医薬品として使われていた薬を薬店で店頭販売できる一般用医薬品に転換したものです。

 OTC医薬品を購入して使用するのは、「病院に行くほどでもない」とか、「待ち時間の長い病院には行きたくない」などの心理が働き、自分でどうにかしようという時だと思います。しかし、すべての医療用医薬品がOTC医薬品として購入できるわけではなく、購入できるのはほんの一部です。また、薬の選択や見極めが難しい場合もあります。

 たとえば、男性型脱毛症(AGA)が挙げられます。AGAですぐに病院に行くという人は少ないですし、まずは薬店で薬を買う人が大半でしょう。ただ、薬店で購入できるAGA用剤は外用剤(液剤、スプレー、シャンプーなど)のみですが、医療用には「プロペシア」(フィナステリド)や「ザガーロ」(デュタステリド)といった内服薬(飲み薬)があります。つまり、さらに進んだ治療薬の選択肢があるということです。

 ほかにも「虫歯」も例として挙げられます。まずは薬店で購入できる歯磨きで予防し、症状が気になり始めたら歯科医院を受診して治療を行うという人が一般的です。健康意識の高い人は、薬局で高濃度のフッ素が入った「フッ素洗口液」(ミラノールやオラブリスなど)で虫歯予防をしているかもしれません。

 医療財政が切迫する日本では、OTC医薬品の使用=セルフメディケーションが推奨されています。その際に押さえておきたいポイントは、①症状の改善が見られない、または悪化したら速やかに受診する②薬選びは薬店の薬剤師に相談する③用法・用量を必ず守るの3点です。

 3つのポイントを意識してOTC医薬品を有効活用し、健康寿命を長く保ちましょう。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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