予後が悪い膵臓がん 早期発見のための「4つのポイント」

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 健康診断や人間ドックのシーズンだが、これらの検査を毎年受けていても早期発見が難しく、予後が悪いのが膵臓がんだ。少しでも早く見つけるために知っておきたいことを、がん・感染症センター都立駒込病院院長の神澤輝実医師(消化器内科)に聞いた。

 膵臓がんの予後が悪いのは、主に3つの理由からだ。

「まず、早期では症状が出にくい。1~2センチの早期で見つかっている患者さんは別の検査を受けて偶然という方がほとんど。次に、悪性度が高く、薄い臓器なので早い段階で浸潤や転移が起こり、また再発しやすい。さらに抗がん剤治療や放射線治療が効きにくい」

 ただし、諦めるのはまだ早い。近年、抗がん剤治療や放射線治療を手術と併用して行うことが増えており、かつてよりは生存期間が延びているのだ。重要なのは、膵臓がんの危険因子をしっかり押さえ、それに該当する人はちょっとした異変を見逃さないようにし、手術が可能な段階で発見できるようにすることだ。

 危険因子は4つある。

■生活習慣病

 2型糖尿病がある人は膵臓がんの発症リスクが約2倍高い。

「注意が必要なのが、発症から1年未満。膵臓がんの発症リスクが5・38倍高い。糖尿病の急激な増悪も、見逃してはいけないサインです」

 ずっとコントロールできていたのに、ヘモグロビンA1cがいきなり6から8台に上がり、下がらない……。「糖尿病の薬を増やして様子を見ましょう」となりがちだが、もし膵臓がんなら、数カ月の“様子見”の間に、手術が不可能な段階まで進行してしまう可能性がある。糖尿病専門医は内分泌が専門で膵臓がんは専門外。膵臓がんをよく診ている消化器内科医を受診しよう。

■嗜好

 たばこが問題だ。膵臓がんの発症リスクは1・68倍。

「喫煙量や喫煙期間と関係しています。ほかの危険因子がある人は、より発症リスクが高くなる。該当項目があるなら、たばこはやめるべき」

 肥満も危険因子。飲酒は、よほど大量飲酒していなければ、相関関係は指摘されていない。

■家族歴

 リスクが高くなる。親、きょうだい、子供に2人以上の膵臓がん患者がいる家系は家族性の膵臓がんが疑われる。特に、50歳未満に発症した患者がいれば、発症率は9・31倍といわれている。

「すべての膵臓がんの5~10%は家族性膵臓がんという報告もあります」

■膵臓の病気

 ひとつは、慢性膵炎だ。膵臓がんで起こる遺伝子変異が見られ、膵臓がんの発症リスクが13・3倍高くなる。

 膵炎には急性と慢性があり、急性膵炎は膵臓内では働かない膵液が急激に活性化して、膵臓を消化してしまう。一方、慢性膵炎は膵臓内で持続的に炎症が起こり、膵臓の細胞が破壊されて徐々に硬くなる。急性膵炎から慢性膵炎へ移行するケースもある。

「慢性膵炎の症状は上腹部痛で、背中に抜けるような痛み。お酒を飲んだ翌日などに感じやすい。痛みが続くなら、病院で検査を受けた方がいい。慢性膵炎と判明したら、禁酒が基本です」

 もうひとつの膵臓の病気が、膵管内乳頭粘液性腫瘍。膵臓には嚢胞性腫瘍という病気があり、その代表だ。超音波検査やCTで偶然発見されるケースも増えている。

「4つの危険因子のいずれかが当てはまる人は、たばこや肥満など、やめられるものはやめる。糖尿病の人は年に1回は腫瘍マーカーとアミラーゼのチェック、そして超音波検査を。複数の危険因子のある人は、MRIもお勧めです」

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