天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

“裾野”が広がり医師を目指す学生の質が落ちている

順天堂大学医学部付属順天堂医院の天野篤院長(C)日刊ゲンダイ

■「一軍選手」と「その他大勢」との格差が広がっている

 実際、医学部に入学しても卒業できない学生はかなりいますし、医師国家試験に合格できない学生もたくさんいます。入学時の偏差値が高くても、10人に1人が国家試験に落ちる国立大学もあるほどです。

 学生の質が低いと、指導する教員のモチベーションも下がってしまい、しっかり丁寧に教育しようという熱意が減っていきます。そうした相互作用によって、さらに学生の質が下がる悪循環が生まれているのです。そうした環境が当たり前になってくると、国家試験の合格率がだいたい80%台後半で、たまに90%を超えるくらいで「よくやった」と満足するレベルに落ち着いてしまいます。由々しき事態といえます。

 もちろん、医師という職業への使命感を持っている優秀な学生もたくさんいます。すると、質の低い学生との間で大きな格差が生まれます。

2 / 4 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

関連記事