耳鳴りめまい難聴…聴神経腫瘍かも

突然の難聴は本当に突発性難聴? 診断を疑うべきポイント

聞こえの悪さが「突然」に…
聞こえの悪さが「突然」に…

「突発性難聴」と診断された中に、相当数の聴神経腫瘍が隠れている。この連載の初回から何度も触れていますが、では、突発性難聴と聴神経腫瘍の症状の起こり方は、どう違うのでしょうか?

 突発性難聴はその病名が示すように、「突然」起こる難聴です。寝るまではまったく正常に聞こえていたのに、朝起きたら音をまるで聞き取れなくなっていた――。

 一方、聴神経腫瘍は、少しずつ聴力が落ちていくと考えられがちです。聴神経腫瘍は一般的に、年間1~2ミリずつ大きくなるといわれていて、それに従い聴力が失われていくと考えると、「少しずつ」というのが理にかなっています。しかし、実際はそうではありません。聴神経腫瘍も、半数以上は聞こえの悪さが「突然」起こっているのです。ある患者さんは、まさに「朝起きたらまったく聞こえなくなっていた」。作業をしている最中にピーという耳鳴りがして、「あれ」と思っていたら、何かの拍子に電話の受話器を取って耳に当てても何も音が聞こえなくなっていた、と話す患者さんもいます。こうなると、患者さんの訴えだけでは、突発性難聴なのか聴神経腫瘍なのか、判断がつきません。MRIなどで検査をしないと、聴神経腫瘍を否定はできないのです。

 耳鼻咽喉科の先生方も参加する講演では、何度も「突発性難聴を診断する時は、聴神経腫瘍の可能性も疑わなくてはならない」と話していますが、なかなか浸透しない。「突然」という一点で、安易に突発性難聴と診断してしまうケースが多いのです。

 患者さんの心得としては、もし突然難聴になり、「突発性難聴」と診断されて、それ以上の検査を組んでくれないようでしたら、「世の中には聴神経腫瘍が隠れているケースもあるようですから、MRIも念のため撮ってください」と、自ら言うべきだと思います。

河野道宏

河野道宏

東京医科大学病院脳神経外科主任教授。聴神経腫瘍・小脳橋角部腫瘍・頭蓋底髄膜腫手術のエキスパート。

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