薄毛や抜け毛は「ゴースト血管」が原因 改善のポイントは

ながら運動で血流を上げる
ながら運動で血流を上げる(C)日刊ゲンダイ

 今、注目を集めているのが「毛細血管」だ。認知症や骨粗しょう症予防に役立つといわれている。健康な状態でなくなった毛細血管を「ゴースト血管」と名付けた、大阪大学微生物病研究所情報伝達分野の高倉伸幸教授に話を聞いた。

 毛細血管は体中の細胞に酸素や栄養を届け、さらには二酸化炭素や老廃物を回収するのに欠かせない存在だ。高倉教授はがん治療の研究から、毛細血管の重要性に着目。加齢や高血糖によって生じた物質「AGE」によって、毛細血管が傷み、正常な働きを担えなくなる「ゴースト血管」になることを突き止めた。

「認知症など病気から体を守り、健康で長生きするには動脈とともに、毛細血管の働きを正常に保つことも重要。そして、毛細血管がゴースト血管になっている人も、いくつかの点を実施することで、ゴースト血管を改善できるのです」(高倉教授=以下同)

 そもそも自分の毛細血管がゴースト血管化していないかどうか? 見た目と体調で分かる。見た目では、「以前より太りやすくなり痩せづらくなった」「抜け毛が多い。薄毛が気になる」「肌のトラブルが増えた」「爪が欠けやすい」など。体調では「階段を上ると息切れがする」「疲れやすくなった」「風邪をひきやすくなった」「手先、足先が冷える」「たまに運動をすると筋肉痛がしばらく続く」「昔よりお酒が弱くなった」など。

「ゴースト血管化すると、体の末端への血の巡りや新陳代謝が悪くなり、末端の細胞まで酸素や栄養を届け、老廃物を回収するという働きができなくなります。毛細血管から血液成分が漏れやすくなり、慢性的な炎症状態にもなる。そのため、見た目も老いが目立つようになり、内臓機能が低下して不調が生じるのです」

■ながら運動で血流を上げる

 もし該当するようなら、対策だ。血管のゴースト化を防ぐには、「血管力」を上げること。

 そのためには、①血液の質を上げる②どう食べるか③血管をしなやかにする④自律神経のバランスを保つ⑤血流をアップする⑥下半身を鍛えて血流を上げる⑦血管に刺激を与える⑧ぐっすり眠って血管を修復する⑨「Tie2(タイツー)」を活性化する――が必要だという。

「タイツーとは血管内皮細胞に発現する分子です。毛細血管の壁細胞からはアンジオポエチン1という分子が分泌されていて、これがタイツーを活性化させ、血管内皮細胞同士の接着を誘導し、血管力を上げる。ところが加齢とともにアンジオポエチン1が分泌されにくくなり、さらに高血糖による酸化ストレスなどでタイツーが活性化されなくなる。それがゴースト血管を招くのです。アンジオポエチン1と同じ働きをする物質を摂取して、タイツーを活性化させれば、ゴースト血管の改善が期待できる」

 ①~⑨を実現させる方法はいくつもあるが、特に重要なのは日常的な運動。1日20~30分のウオーキングを日課にする。「運動をする時間がない」「運動が嫌い」という場合は、「ながら運動」がお勧め。

「椅子に座る時は常に背筋を意識する。歩く時は背筋を伸ばし、きびきびと歩幅を広く。階段を使う、1駅歩くなどもいいでしょう」

 次に、食べ方だ。腹八分目を目指し、一気に食べたり飲んだりせずに少量に分けて食べる。高血糖にならないよう、糖質の取り過ぎにも気を付ける。血管全体の質を良くするために、塩分を減らすことも大事。

「タイツーを活性化させる物質として、シナモンやヒハツ、ルイボスなどがありますが、身近なものとしてはシナモンでしょうか。私が大手化粧品会社との共同研究で200種類以上の天然由来成分から調べたところ、シナモンに血管内皮細胞間を接着する力が強いことが分かったのです。シナモンをコーヒーや紅茶などに入れるなどして、摂取してはどうでしょうか? ただし、大量に取ると肝機能に副作用があるとの報告もあるので、1日600ミリグラムを上限に」

 早速、今日から始めよう。

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