役に立つオモシロ医学論文

1万7000人超での研究結果 笑いの頻度は健康にどう影響する

笑うことは健康につながる
笑うことは健康につながる(C)日刊ゲンダイ

「笑う門には福来る」という言葉があります。人とのコミュニケーションの中で生まれる「笑い」は、私たちの日常生活に幸福感をもたらしてくれます。

 笑いは健康面にも良い影響を与えることが示唆されています。実際、笑いを誘うようなユーモア(人を笑わせるためのお笑い芸)を用いたケアを行うと、不安症状の緩和や睡眠の質の改善効果が期待できます。また、笑う頻度が多い人は心臓病や脳卒中が少ないという報告もあります。

 そんな笑いの頻度と健康への影響に関して、日本人を対象とした研究論文が日本疫学会誌電子版に2019年4月6日付で掲載されました。

 この研究では、山形県に在住している40歳以上の1万7152人が対象となっています。被験者は、笑いの頻度によって「週に1回以上」「月に1回以上、週に1回未満」「月に1回未満」の3つの集団に分けられ、死亡率と心臓病の発生率が比較されました。なお、結果に影響を与え得る、年齢、性別、高血圧の有無、喫煙・飲酒状況などの因子で統計的に補正を行って解析をしています。

 中央値で5・4年にわたる追跡調査の結果、笑いの頻度が高い人たちで、死亡リスクや心臓病の発症リスクが低いことが分かりました。週に1回以上笑う人に比べ、月に1回未満しか笑わない人では死亡リスクが約2倍、統計学的にも有意に高く、心臓病の発症リスクが1.4倍多い傾向にあるという結果です。

 日常生活の中で笑いが多い人は、もともと健康的な人なのかもしれません。とはいえ、過去の研究報告も踏まえれば、笑いが健康に良い影響を与える可能性は高いといえるでしょう。

 元号も変わり、新しい時代が始まりますが、この先の未来が笑いに満ちあふれた社会になるよう願っています。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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