市販薬との正しい付き合い方

漢方薬を安心して使うためには正しい知識を身に付ける

写真はイメージ
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 今回から、一般の薬店で購入できる市販医薬品(OTC医薬品)の中でも「漢方薬」を取り上げ、紹介していきます。

 とはいえ、漢方は歴史も深く種類も豊富で、すべてを紹介することは難しいので、一般的に役立つ知識や裏話をお話しします。

 医療現場、特に大規模な総合病院では、使われている薬のほとんどは西洋医学に基づいた薬(西洋薬)です。しかし、漢方もしっかり治療に取り入れられていて、これは効果が期待されている表れでもあります。

 また、世界保健機関(WHO)から出される「国際疾病分類ICD」の次回更新ICD―11には、「伝統医学の病態」が盛り込まれることになっています。漢方を含む伝統医学に注目が集まりつつあるということでしょう。

 漢方薬には、「薬はイヤだけど漢方ならイイ」という愛用者がいる一方で、「漢方は効かない」というイメージから嫌う人もいます。「苦くて飲めない」などの理由があるなら仕方ありませんが、誤ったイメージや誤解によって漢方が使用されないというのは非常に残念なことです。

 また、誤った知識によって不適切な使用をするのも問題です。実際、薬剤師が「メーカーによって、同じ漢方処方名でも成分の種類や量が違う」場合があることを知らず、処方されていたメーカーとは別のメーカーの漢方薬を患者に出してしまった事例も報告されています。薬の専門家でもこうした間違いを犯してしまうくらいですから、一般の方が誤った知識やイメージを持っていてもおかしくはありません。

 漢方は処方箋がなくても購入可能なものもあります。ですから、知識を身に付けることは薬を選ぶ上でも重要です。漢方薬を安心して使うためにも、漢方を正しく知ってもらいたい。次回から詳しくお話ししていきます。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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