「いや先生、何も症状はないし、薬を続けてくださいよ。治療をやめて、何を頼りに生きられるの? ただ死ぬのを待つ、そんなことできますか。夫は元気だし……。先生、薬を続けてよ。薬をやめて黙って悪くなってくるのを見ていられないのよ。飲んでいなかったら、がんはもっと大きくもっと悪くなっていたんじゃないですか? 薬ががんの進行を抑えているのではないですか?」
■担当医は良い状態が続いて欲しいと思っている
ここで、Aさんは急に奥さんを制したそうです。
「先生の言う通り薬をやめて、少し様子を見よう。具合が悪くなっても診て下さるといっているのだから。薬を飲みたい時は、また先生に言うから。ほら、先生困ってるよ。先生を困らせたらダメだ」
この言葉で奥さんは黙りました。そして結局、内服抗がん剤をやめて様子を見ることになったのです。
がんと向き合い生きていく