これで認知症介護は怖くない

認知症で引きこもっていた人が外に出るにはきっかけが必要

家族が説得するより、同じ年代の第三者の誘い(提供写真)

 たとえば広島の竹内裕さんは、同期生の還暦祝いに無理やり連れ出され、酒を飲んでいるうちに居直ったという。佐世保の福田人志さんは、自分が創作した「壱行の歌」の展示会を開いたことがきっかけでカミングアウトした。

 また「Dシリーズ」という認知症ソフトボール大会でMVPに選ばれた曽根勝一道さんは、喜びのあまり、ついカミングアウトしてしまった。村山明夫さんは、デイサービスなんか絶対に行かないと言ってたのに、町田市の「DAYS BLG!」という事業所を見学した途端に通所するようになり、今では大勢の前で講演までしている。

 比較的多いのは、家族が説得するより、同じ年代の第三者に誘われて外に出るようだ。誘われた先で納得するものがあったり、認知症になっても人に役立てることが実感できたりすれば、たとえ2年、3年と引きこもっていても1日でカミングアウトする。カミングアウトして毎日を生き生きと過ごすようになれば症状の進行も緩やかになり、結果的に家族の介護が楽になるのだ。

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奥野修司

奥野修司

▽おくの・しゅうじ 1948年、大阪府生まれ。「ナツコ 沖縄密貿易の女王」で講談社ノンフィクション賞(05年)、大宅壮一ノンフィクション賞(06年)を受賞。食べ物と健康に関しても精力的に取材を続け、近著に「怖い中国食品、不気味なアメリカ食品」(講談社文庫)がある。

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