性感染症最前線

性器カンジダ症<2>発症の原因は抗生物質の服用が多い

写真はイメージ
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 真菌(カビ)の一種のカンジダ菌が性器で増殖して発症する「性器カンジダ症」。発症のほとんどは女性で腟炎や外陰炎を起こすので、一般的に「外陰腟カンジダ症」と呼ばれる。主な症状は強いかゆみと、白色の粘度の高いオリモノの増加。性感染症のひとつに挙げられるが、セックスが原因になるのは全体の5%ほどしかない。

 では、主に何が原因で発症するのか。性感染症専門施設「プライベートケアクリニック東京」(新宿区)の尾上泰彦院長が言う。

「カンジダ菌は常在菌なので、腟や外陰から検出されてもすぐ発症するわけではない。ストレスや他の常在菌とのバランスが崩れたり、体の免疫力が弱まったりして、極端に増殖すると発症するのです。多い誘因は、他の病気での『抗生物質』の服用。もともと腟内にいる細菌が死滅してしまい、菌交代現象が起こるのです」

 カンジダ菌はカビ(真菌)なので抗生物質で殺されることなく、わがもの顔で増殖してしまうのだ。薬でいえば免疫力を抑制する作用のある「免疫抑制薬」や「ステロイド薬」の服用も誘因になるという。

 風邪、疲れ、ストレス、糖尿病、月経の前後などがあっても免疫力が低下するのでカンジダ菌が増殖しやすくなる。このように性器カンジダ症は、性感染症としてとらえられている一方で、通常なら無害の病原体が免疫力の低下によって発症原因になる「日和見感染症」という側面が強い。

「妊娠時もホルモンの変化で、腟内の清潔を保っている酸性度が低下するので、通常よりリスクが高くなります。これはピルの使用中も同じです。また逆に、清潔にし過ぎる習慣もよくない。ビデ(腟内洗浄)やせっけんで洗い過ぎると、もともといる良性の常在菌が減って、腟内の菌交代現象が起こりやすくなるのです」

 トイレの作法も意外と肝心。腸管にもカンジダ菌がいるからだ。再感染の経路には、自分の腸管にいるカンジダ菌が肛門から外陰部を経て、新たに腟に自己感染することが知られている。排便または排尿の時は、女性は前から後ろにふき取ることが鉄則だ。

「治療は、抗真菌薬の腟錠や内服、軟こうなどの外用薬を使います。1~2週間の治療で85~95%は治る。治癒とは、カンジダ菌がいなくなったことではなく、かゆみや異常オリモノなどの症状が消えたことを指します」

 カビは湿気が大好き。ちなみに男性の性器カンジダ症(亀頭包皮炎)は、「包茎」も誘因のひとつになるという。

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