これで認知症介護は怖くない

認知症の家族を「頑張って最期まで介護する」は正しいのか

(提供写真)

「頑張ってお母さんを最期まで家で介護するつもりです」

 といった文章だ。きっと真面目で実直な方なのだろうが、私には不安で仕方がない。

 介護は頑張ってできるものではない、と私は思う。確かにがんの場合、在宅で最期まで面倒を見る方は多い。しかし、認知症と決定的に違う点がある。がんの終末期は、介護する期間が2~3カ月に対し、認知症は長期にわたることだ。24時間、気を緩めることのできない介護が何年も続くのである。

 それに加えて、意見の合わない家族や親族がいたらどうなのだろう。わが家はストレス空間になってしまうだろう。

 そしてもうひとつ、その介護がいつもうまくいくとは限らないことだ。

 たとえば「認知症の父が自分の言う通りにしてくれない」と訴える方がいたが、果たしてそれを自分で解決できるだろうか。ご飯を作ったのに食べてくれない時は? 幻覚が見えたら?

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奥野修司

奥野修司

▽おくの・しゅうじ 1948年、大阪府生まれ。「ナツコ 沖縄密貿易の女王」で講談社ノンフィクション賞(05年)、大宅壮一ノンフィクション賞(06年)を受賞。食べ物と健康に関しても精力的に取材を続け、近著に「怖い中国食品、不気味なアメリカ食品」(講談社文庫)がある。

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