こうした実態を見ると、やはり医学教育制度を見直す必要があると思います。例えば、医師を目指す学生が医学部に入学する時点から丸抱えして管理するのも一案です。地方の医療が疲弊しないように卒業生の就労先も振り分け、一定の条件や待遇で働いてもらいながら、ある程度の経験を積んだ段階で新たな進路先を見つけさせるというスタイルです。特定のイデオロギー的な仕組みにも思えますが、「すべての国民に一定水準以上の平等な治療を提供する」という理念を原則にしている日本の国民皆保険制度の中では、それもひとつの方法ではないでしょうか。
そもそも、いまの学生は医学部に入学して医師になるまでの過程で公費が投入されています。私立大学の場合、6年間の医学教育費は学生1人当たり約1億1000万円かかっています。6年間の学費が2000万円の大学では、9000万円が公費で賄われている計算になります。国公立大学の場合は授業料が安い分、さらに多くの公費が使われています。医師は国民の税金に支えられて育ててもらっているのです。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」