歯の疑問 ずばり解決!

「キシリトール」で本当に歯の再石灰化ができるのか

 再石灰化はズバリ「できない」と考えています。

 2015年、イギリスの研究グループがキシリトールの虫歯予防修復効果について検証し、「十分に効果があるというデータを示すことができなかった」と発表しました。

 医療従事者は、研究結果(エビデンス)の裏打ちがなければ「効果がない」と考えますから、現段階では修復と再石灰化に関して、その効果は「認められない」と認識しているのです。

 僕の患者さんの話ですが、知覚過敏を治したくて約20年もの間、歯の再石灰化をうたったキシリトールガムを積極的に選んで噛んでいた女性がいました。

 彼女は歯の再石灰化ができれば、歯全体で感じる熱さや冷たさ、歯の付け根が染みる知覚過敏を治せるのでは……と期待していたそうです。診察時にこの研究結果の話をして「キシリトールガムを噛んでも知覚過敏は治らない」と伝えると、とても驚いていました。

 彼女は、歯磨き粉もキシリトールが配合されているものを積極的に使用していたそうです。もちろん、エビデンスがないのですから、効果は期待できません。長い年月、効果を期待していたのでしょう。ひどくガッカリされて、その様子は大変気の毒なものでした。

 このように歯の再石灰化は期待できませんが、ガムやキャンディーを食べるのなら砂糖が配合されているものより、虫歯になりにくい甘味料であるキシリトールの方を強くオススメします。

 ただし、効果の過信は禁物です。キシリトールが配合されたものを頻繁に口にしているから歯磨きをしなくていい、ということではありません。歯磨きは絶対に必要ですし、ハッキリ痛む虫歯や知覚過敏でお悩みなら、すぐに腕の良い信頼のおける歯医者さんへ行くべきです。

 消費者側も、ただ「良さそうだから」というだけでなく、お口の健康を守るために、もう少しケアグッズに関心を持つことでより良い方向に向かっていくと思います。

※構成=小澤美佳

北沢伊

北沢伊

1977年7月8日、長野県生まれ。斉藤歯科医院院長。2003年に日本大学松戸歯学部を卒業。同年から同院に勤務し、13年から院長に就任した。若手歯科医師に向けたセミナーの講師を務め後進の育成にも取り組んでいる。日本口腔インプラント学会専門医。千葉県歯科医師会所属。

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