Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

大腸はベーコン3枚で2割増 がんリスクは生活習慣で上がる

お茶やコーヒーの適温は?
お茶やコーヒーの適温は?(C)日刊ゲンダイ

 あの笑顔に勇気づけられる方もいるでしょう。タレントの堀ちえみさん(52)のことです。

 今年2月に舌がんで手術を受けたのに続き、先月には食道がんが判明。取り除いた細胞を病理検査したところ、GW中の2日には「結果はステージ0。追加の治療も外科手術も必要ない」とブログにつづっています。

 その後は、親子丼を作って家族で食べたり、リハビリを受けてから風呂釜の掃除をしたり。病気にめげることなく、前向きに生活されている様子が見て取れます。その調子でぜひがんを克服してほしい。心底、そう思います。

 さて、今回はがんと生活習慣の関係について。食道がんは、飲酒と喫煙に加えて、熱い飲食物がよくありません。イランで5万人を追跡したところ、1日に60度以上の「とても熱い茶」を飲む人は、「冷たい・ぬるい茶」を飲む人に比べて食道がんを発症するリスクが2・4倍高いことが明らかに。

 国立がん研究センターの調査でも、熱い飲食物が食道がんリスクを上げることは「ほぼ確実」。国際がん研究機関は3年前、熱い飲食物を発がん物質に分類しています。大腸がんについては、加工肉です。

 英オックスフォード大などのグループが英国人50万人を6年ほど追跡。毎日ベーコンを3切れ食べる人は、1切れの人より大腸がんリスクが20%増加すると報告。国際的に加工肉が大腸がんリスクになることは注目されていますが、日本はそれほどでもないでしょう。

 英国の保健制度によると、ベーコン1枚は加工肉23グラム相当。76グラムの加工肉は赤身のステーキ230グラムに相当するといいます。果たして、日本にステーキを上回るほどの量のベーコンを毎日食べる人がいるでしょうか。

 それより注目は、肥満と運動不足。これが大腸がんのリスクを上げることが分かっています。大腸がんはメタボの延長線上にあり、減量と運動がリスクを下げます。

 その点でいうと、糖質や甘いものを好んで糖尿病になると、膵臓がんと肝臓がんのリスクが、糖尿病でない人に比べて2倍に。糖尿病の人は、全体のがんを2割増やします。ですから、糖質制限は、がん予防にも重要です。

 先ほど熱いものがよくないといいましたが、コーヒーはほぼ確実に肝臓がんを防ぎ、緑茶は胃がん予防になる可能性があります。イランの研究では、6分待ってから飲むと、リスク低下になりますから、冷まして飲むといいでしょう。

 最後はセックスです。セックスでHPVというウイルスが女性の膣に感染すると子宮頚がんに、咽頭に感染すると咽頭がんになります。特に、咽頭の中央部の中咽頭がんは、半分がHPVが原因とされますから、男性も要注意です。

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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