がんと向き合い生きていく

日本は米国の「自己決定権が最も重要」とされる医療とは違う

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 何よりも大切なもの、「いのち」――。それは当たり前でしょう? と言われそうです。

 たしかにそうなのですが、最近は医療において「自分の意思」や「自己決定」が最も大切なもののように考えられている気がするのです。

 アメリカの医療は自由診療制、患者と医師との自由な契約によって医療が行われます。

 自立、銃を持てる国、「自己決定権が医療において最も重要」とされるのがアメリカの医療です。そして、患者に決定の自己責任を負わせるのです。

 一方、日本の医療は社会保障の一環で、国民に対して一律に行われます。アメリカの「契約に基づく医療」とは違います。それなのに、いまや日本でも、本人の意思や自己決定権が一番大切だと考えられている節があるように感じることがあります。

 本人の意思だから……。自分のことは自分で決める……。自分で決めたことだから……。患者が自分で選んだのだから患者に責任を負わせる……。たしかにそうでもあります。しかし、本来は、私は違うようにも思うのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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