徐々に薄味には難しい…医師が勧める我慢不要の減塩法とは

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 高血圧のガイドライン改定で、基準値(140/90=単位は㎜Hg)は変わらないものの、治療目標値が、従来より10㎜Hg引き下げられた。

 今後、75歳未満は130/80、75歳以上は140/90を目指すことになる。

 東京都健康長寿医療センター顧問の桑島巌医師は、「血圧は低いほど脳卒中や心筋梗塞を起こしにくい。それが、米国の大規模試験で実証された」と話す。 

 2015年に実施された米「SPRINT研究」では、高血圧患者9361人を2群に分け、一方は降圧目標を「上の血圧120未満」とし、もう一方は「上の血圧140未満」として、約3年間追跡した。結果、「120未満」は「140未満」より心筋梗塞・脳卒中の発症率が約25%、全死亡率は約27%低かった。

「着目すべきは、年齢に限らず血圧は低いほどいいと明らかになったことです。これまで高齢者は血圧を下げすぎるとよくないと考えられてきた。私は東京都健康長寿医療センターで長年蓄積されたデータなどから、高齢者であっても血圧は低い方がいいとずっと主張してきた。今回の米国の結果で客観的に裏付けされました」(桑島医師)

 日本での高血圧治療目標値が引き下げられたとなると、より食生活改善に努める必要がある。具体的には、減塩だ。

「濃い味付けだった人が、徐々に薄味にしていくのは難しい。むしろ一気に塩分量を減らし、慣れることを目指した方がいい。必ず慣れます」

 こう言うのは、医療機関で食事指導を行う、横浜創英大学名誉教授で管理栄養士の則岡孝子氏。

 減塩の物足りなさを少しでも減らすために勧めるのが、酢だ。

「おひたしなどは醤油を少量にして、レモンなどの柑橘類を搾ったり、酢をかける。塩味が少なくても気にならなくなります。酢の成分である酢酸には、血管を広げるアデノシンに働きかけ、血圧の上昇を抑える効果もあります」(則岡氏)

 ちなみに、血圧が高めの人が大さじ1杯の酢を含む飲料を10週間毎朝続けたところ、上の血圧が平均6.5%減ったというデータもある。

 醤油のつけ方にも工夫を凝らしたい。

「刺し身などにべたっとつけると、醤油の取り過ぎになる。刺し身の端にちょっとつけ、その部分から口に入れれば、醤油の味を先に感じ、少量でも満足します」(則岡氏)

 焼き魚や漬物など、味わう前に「醤油をだーっとかける」ことが習慣化している人は、その習慣を改めよう。

 醤油をかけずにそのまま食べたら、意外に醤油がなくてもおいしく感じるかもしれない。

 醤油の香りが欲しければ、小皿に醤油を少量入れ、前述のように端にちょっとつけて、その部分から口に入れる。則岡氏は、七味などをかけて新たな風味付けをすることも提案する。

■短命県が「だし活」で平均寿命の伸び幅全国3位に

 青森県は平均寿命が男女ともに全国最下位。死亡者数の4分の1が塩分の取り過ぎが原因となる循環器疾患だ。

 そこで、14年から、だしのうま味を活用した料理を食べることで食塩の取り過ぎを防げる――などの理由で、だしを活用する「だし活」を始めた。

 味覚が発達する子どもの頃からだしのうま味を覚えてもらうために3歳児の乳幼児健診でだしの試飲を行ったり、手軽にだしを使ってもらえるように県産食材を使っただし商品を開発したり。

 加えて最近は、ナトリウム排出に役立つカリウムを旬の野菜から摂取することも推奨している。

「平均寿命の伸び幅は全国3位になり、健康寿命は男性が34位、女性が20位になるという明るい兆しがあります」(青森県総合販売戦略課担当者)

 やればやっただけ、結果が出るのだ。

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