高齢になると、認知症以外にもさまざまな疾患があって次々と薬を出されるが、家輔さんは18剤もの薬を飲んでいた。特に注意したいのはベンゾジアゼピン系の抗精神病薬である。この薬は筋肉量を低下させるので転倒の原因にもなる。結局、18剤を5剤以下に減らしたら、「魔法のように」暴言・暴行が消えたという。
もうひとつの原因は、家族との関係性である。これまでも述べたが、「また忘れて!」といった励ましの言葉が続くと、本人は「叱られている」と受け止めて必死に耐える。あるいは「認知症だから何も分からない」と思われて家族からカヤの外に置かれると、寂しさでいたたまれなくなる。やがて精神的に限界がくると、やさしい人は家出をしたり、勝ち気な人は暴力を振るったり怒鳴ったりすることで抵抗する。
問題の解決はそれぞれ違うが、前者は、6剤以上の薬を飲んでいたら、医師に相談して減らすことだ。後者は、「認知症だけど、ちょっと障害があるだけで私たちと同じなんだ」と考え、以前の家族関係に戻すことだ。
「居心地がいい」と感じれば、誰だって暴れることはないはずである。
これで認知症介護は怖くない