これで認知症介護は怖くない

「行きたくない」とデイサービスを拒否するのは男性が多い

(提供写真)

 デイサービスには喜んで行く人もいれば、「あんなトコには行きたくない」と、かたくなに拒絶する人もいる。ずっと家で過ごせたらいいのだが、ヘタすると生活リズムが崩れたり、社会とのつながりが消えたりして孤立しかねない。それに家族は介護負担を考えると、やっぱりデイサービスには行ってほしいはずだ。

 なぜデイサービスに行かないのか。拒否した当事者にうかがってみた。

「見学に行ったら、年寄りが塗り絵をしたり人形を作ったりしてるじゃない? 冗談じゃない、あんなことできるか」

「行ったら、いきなりお風呂に入れられた。そのうえスタッフが『洗いましょう』って入ってくる。あんな恥ずかしいことはなかった」

「年寄りが集まって何がおもしろい?」

 最初の方は村山明夫さんで、このあと町田市の「DAYS BLG!」を見学したら、車の洗車やチラシの配達だが、働けると分かって今はそこに通っている。

 2番目の曽根勝一道さんは、トレーニングマシンが置かれているデイサービスに移ってからは満足している。最後は酒が好きな某大学の元教授で、「宴会になるかもしれないけどどうです?」と誘われて行ったところ、酒がわりにお茶でワイワイやっているうちにすっかりその事業所が気に入ったという。

 拒否するのは男性に多いそうだ。第一線で頑張ってきたプライドが許さないのだろう。

 デイサービスに行かない理由はさまざまだが、いずれも行った先が納得できないからである。村山さんのように、「嫌だ」と言っていても、納得できれば休まず通ってくれるのである。

 大切なのは、家族だけで施設を決めないことである。一緒に見学して気に入るデイサービスを探せばいいのだ。

 困るのは、「私には必要ない」と断固拒否されることである。「お父さんをひとりにしたら危なっかしくてしょうがない」なんて言えば火に油を注ぐ。簡単ではないが、自分がいかに困っているかを説明すれば、「子供のためなら」と納得してくれるケースもあるそうだ。

奥野修司

奥野修司

▽おくの・しゅうじ 1948年、大阪府生まれ。「ナツコ 沖縄密貿易の女王」で講談社ノンフィクション賞(05年)、大宅壮一ノンフィクション賞(06年)を受賞。食べ物と健康に関しても精力的に取材を続け、近著に「怖い中国食品、不気味なアメリカ食品」(講談社文庫)がある。

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