自動車運転中の喫煙は交通事故のリスクであると考えられています。その理由として、たばこを取り出す、火をつける、灰皿に灰を落とす、火を消す――といった一連の喫煙関連行動が、運転に対する集中力を散漫にさせるからです。
喫煙習慣と交通事故死の関連性を検討した研究論文が日本疫学会誌2019年5月号に掲載されました。
この研究では、茨城県に在住する男性3万3138人、及び女性6万3940人が対象となっています。被験者は、全く喫煙したことのない非喫煙者、かつて喫煙をしていた元喫煙者、喫煙本数が1日20本未満の喫煙者、喫煙本数が1日20本以上の喫煙者の4つのグループに分けられ、交通事故死のリスクが比較されました。なお、結果に影響を与えうる年齢や飲酒状況について、統計的に補正を行い解析をしています。
20年にわたる追跡調査の結果、男性の交通事故死のリスクは、非喫煙者と比較して、1日20本未満の喫煙者で32%、1日20本以上の喫煙者で54%、高い傾向にありました。統計学的に有意な差を認めていませんが、喫煙本数が多いとリスクの大きさも増加することが示されています。他方、女性では喫煙者の数が少ないために関連性を見いだせなかったと報告されています。
本研究は喫煙習慣と交通事故死リスクの関連を検討したもので、自動車運転中の喫煙行動と交通事故死のリスクを評価したものではありません。運転中の喫煙行動に限定すれば、さらに事故死のリスクは高まる可能性があります。自動車運転中の携帯電話の使用で死亡事故発生率が約2倍増加することを踏まえると、本研究で示されたリスク増加は軽視できないように思います。
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