歯の疑問 ずばり解決!

キスで歯周病が感染するのは本当なのか?

写真はイメージ
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 本当です。確率は低いものの、歯周病はキスで感染する可能性があります。歯周病以外にも、ヘルペスや性感染症、そして虫歯の菌も同様に感染する可能性があります。もっと細かくいえば、食器やグラスの使い回しでも感染のリスクがあります。飲み会やバーベキューでお酒が入ったときの、楽しい気分になっての回し飲みなど、絶対に感染したくない方は注意が必要です。実は、大人同士以上に注意を払わなければならないのは「大人と子供間のキス」による歯周病や虫歯の感染です。たとえば母親が歯周病の場合、その子供は歯周病になり、母親が虫歯の菌を多く保有していれば虫歯になりやすくなります。これは「垂直感染」と呼ばれるもので、親族間では頻繁に見られる感染です。

 ある男性患者さんの体験談をひとつご紹介しましょう。おばあちゃんが孫へ口移しでご飯を食べさせようとしました。これが原因で嫁VS姑戦争が勃発。「汚らしい」「バイキンがうつる!」とお嫁さんは子供をひったくり、怒り狂ったそうです。この事件以後、決定的な溝ができてしまい、嫁は姑にかわいい盛りの孫を一切抱かせなかったとか。患者さんは間に入って大いに困ったそうで、「妻はもう少し言い方に配慮が欲しかった」と残念に思い、また、妻が神経質なことを言っているとも感じたそうです。

 確かに感情や人間関係の部分では、もう少しお嫁さんは配慮が必要だったでしょう。でも、子供の未来の健康を考えれば、お嫁さんの方が正解です。

 意外と軽く考えられがちな口の健康ですが、口の中の環境が悪ければ、さまざまな病気にかかるリスクが発生します。それが健康を損なう大きな原因になるかもしれないのです。大人が子供に、かわいいからと何げなくした一度のキスで、感染させたり、させられたりがありえます。かわいいからこそ気をつける、という意識を持っていただけると不用意な感染を防ぐことができるはずです。 (構成=小澤美佳)

北沢伊

北沢伊

1977年7月8日、長野県生まれ。斉藤歯科医院院長。2003年に日本大学松戸歯学部を卒業。同年から同院に勤務し、13年から院長に就任した。若手歯科医師に向けたセミナーの講師を務め後進の育成にも取り組んでいる。日本口腔インプラント学会専門医。千葉県歯科医師会所属。

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