後悔しない認知症

前頭葉が萎縮してまっても人間の脳には「予備力」がある

写真はイメージ

 もちろん認知症は、神経細胞の数が減るだけでなく、生きている神経細胞にも問題が発生することによって発症するので「脳を使っていれば100%認知症にはならない」とは断言できない。

 しかし、人間の脳には約1000億の神経細胞があるとされており、かつ、実際に人が生涯で使うのは多くて10%、ケースによっては数%にとどまるといわれている。それだけ「予備力」に富む器官なのである。刺激して使い続けていけば、ふだんは眠っている神経細胞が活発に動きはじめて、老化によって減っていた神経細胞の役目をカバーできるともいえるのだ。

 飛行機が航行中にエンジンに故障が発生することがある。だが、ひとつのエンジンの故障だけならもうひとつのエンジンだけで飛行を続け、無事に着陸できる。

 とにかく、子どもは認知症の親の故障してしまったエンジンを嘆くのではなく、いまも見事に動き続けているもうひとつのエンジンの力を愛でるべきだ。認知症であっても熟練パイロットのひとりである高齢な親は、「良くボケた」状態を保ちながら飛行を続けて、見事に着陸してみせるはずだ。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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