市販薬との正しい付き合い方

自分にあった漢方薬を見極めるには「虚・実」を知っておく

漢方には合う合わないがある
漢方には合う合わないがある(C)日刊ゲンダイ

「漢方が効かない」という方がいらっしゃいます。その理由として、「自分に合っていないから」というケースもあります。

 漢方薬の多くは、患者の体質やその時の症状に合ったものでないと、十分に効果を発揮することができません。つまり、効かないのは漢方薬自体の問題ではなく、「選び方」に問題がある可能性もあるのです。

 体質を見極める尺度として、「証」という漢方独特の物差しがあります。簡単にいうと、「体質・体力・抵抗力・症状の表れ方といった個人差を表すもの」になります。

「証」は物差しですので分け方があり、そのひとつに「虚・実」があります。

 体力がない・細い・華奢・顔色がよくない・声が小さい・胃腸が弱い・寒がりなど、弱々しい方は「虚証」。体力がある・筋肉質・血色がよい・肌つやがよい・声が大きい・胃腸が強い・暑がりなど、元気なイメージの方は、「実証」に分類されます。

「虚」と「実」は、本人が訴える症状、体格、見た目などから判断しますが、それらは相対するものです。その「証」に合った漢方薬でないと効かないということになります。

 たとえば、最も有名な漢方のひとつ「葛根湯」は風邪のひき始めには誰にでも効くイメージがあるかもしれませんが、葛根湯にも適した「証」があります。葛根湯は比較的体力があり胃腸の丈夫な人、つまり「実証」の人に使う漢方なのです。ですから、「虚証」の人には用いません。知らずに飲んで葛根湯でお腹の調子が悪くなるような方は、「虚証」という捉え方もできるかもしれません。

 このように、漢方には合う合わないがあり、自分に合った漢方を見極めるには「虚・実」を知っておくことが大切といえます。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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