がんと向き合い生きていく

専門医なのに自分のこととなるとおたおたするだけだった

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 やっとすべて飲み終えると、急にトイレに行きたくなりました。男性用トイレは並んで4カ所あり、交代で駆け込みます。便のつぶつぶがなくなって水様になったら、看護師さんを呼ぶことになっています。結局、トイレには6回通いました。

■「がんはない」と言われた瞬間、体から力が抜けた

 次は、検査中に何かあった時のために腕から点滴ルートを確保します。幸い一度針を刺しただけで成功しました。

 検査を受ける準備を整え、実際に検査室に呼ばれたのは11時ごろだったと思います。横向きになって、肛門から内視鏡が入るのが分かりました。ただ、苦しくもなんともありません。自分ではどこまで内視鏡が入ったか分からないでいましたが、腹部の右側が圧される気がして、「横行結腸を過ぎたかな」と思っていたら、検査医師から「がんのようなものはないですよ」と言われました。その瞬間、体から力が抜けました。

4 / 5 ページ

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

関連記事