Aβを減らしてもAD症状が改善しないことも多いことから、タウタンパク質が新たな治療標的として大きく注目されている。その一部が神経細胞外に出て隣接する神経細胞に伝播することでAD症状が進行するという報告もある。
さらに近年、この細胞外のタウに関しても、睡眠中に減少するという報告がある。
人の睡眠は、急速眼球運動を伴うレム睡眠と伴わないノンレム睡眠の2つで構成されている。ノンレム睡眠時に出る4ヘルツ以下の徐波と呼ばれるゆっくりした脳波が、学習や記憶の定着に関わっているということがわかっている。ならばノンレム睡眠中の徐波を強化した方がよさそうだが、レム睡眠時の脳波も重要だという。それはなぜか?
「レム睡眠は良質なノンレム睡眠を促す作用があるからです。レム睡眠が少ないことが認知症のリスク因子だとの報告もあります。ところが、レム睡眠のことはほとんどわかっていません。実験用マウスのレム睡眠は30秒から1分程度しかなく、その間に脳でどのような変化が起きているかは観察しづらいことが大きな理由のひとつです」