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【アオリイカの炒め物】豊富なカリウムが血圧を下げる

そら豆づくし(右から、アオリイカとの炒め物、すり流し、さっと煮)
そら豆づくし(右から、アオリイカとの炒め物、すり流し、さっと煮)/(C)日刊ゲンダイ
ホールフード主義<3>そら豆づくし

 さやが空に向かってつくことからその名が付いた「空豆(そら豆)」は、福岡先生もおっしゃいますように栄養が豊富です。

 中でも多く含まれている植物性タンパク質はコレステロール値を低下させたり、正常に維持する作用があります。同様に豊富なカリウムはナトリウムの排泄を促して血圧を下げる働きがあり、不老不死レストランの大きなテーマである「塩分を控える」ことにもつながります。

 メインはアオリイカとの炒め物にしました。イカとは食材としての相性が良いうえ、そら豆にはアルコールの分解に必要なビタミンB1、イカには肝臓の働きを助けるタウリンが豊富なため、お酒を召し上がる方にも最適です。

 今回、強調したいのはそら豆の薄皮です。食物繊維、ビタミンやミネラル源として体に良いばかりか、豆そのものよりむしろ味が濃い。さっと煮は薄皮ごといただくのがお勧めです。

 すり流しではこの薄皮だけでなく、つめも使います。つまり、そら豆を丸ごと楽しもうという意図です。少しは食感があった方がよいので、粒子を残すくらいで召し上がってください。

《材料》
◎そら豆 100グラム(薄皮の中央に包丁の先で傷をつけて剥き、薄皮は取り置く)
◎酒 大さじ2、4分の1カップ
◎アオリイカ、または白イカ 100グラム(2センチ幅の一口大)
◎かたくり粉 小さじ2分の1
◎ごま油 大さじ2
◎三温糖 大さじ1と2分の1
◎塩 小さじ2分の1
◎白コショウ 少々

《作り方》
(1)薄皮を剥いたそら豆は酒(大さじ2)と合わせ、アオリイカは、かたくり粉を全体に回るように振りかけておく。
(2)中華鍋は中火。ごま油を入れてしっかりと熱したら、そら豆を酒ごと加え軽く炒める。酒(4分の1カップ)をさらに加えて、そら豆の色が鮮やかになったら、三温糖、イカを加え炒める。水気がなくなったら、味をみながら塩と白コショウで調味する。

【さっと煮】    
 そら豆70グラムのつめをそぎ、つめは取り置く。小ぶりの土鍋または準じた鍋に入れ、酒大さじ3とみりん大さじ2でふたをして汁気を飛ばしたら塩小さじ4分の1で味を調える。

【すり流し】 
 そら豆150グラムと、取り置いた薄皮とつめを合わせてチキンスープ500㏄と酒4分の1カップを合わせて煮て、フードプロセッサーにかけるか、すり鉢であたる。塩のみで味を付けて。

▽松田美智子(まつだ・みちこ) 女子美術大学非常勤講師、日本雑穀協会理事。ホルトハウス房子に師事。総菜からもてなし料理まで、和洋中のジャンルを超えて、幅広く提案する。自身でもテーブルウエア「自在道具」シリーズをプロデュース。著書に「季節の仕事」「調味料の効能と料理法」など。

上から薄皮、実、つめをとったもの
上から薄皮、実、つめをとったもの(C)日刊ゲンダイ
生命の発生に必要な栄養素をすべて含んだ低カロリー食品

 そら豆にしろ、大豆にしろ、ピーナツにしろ、ポリポリおいしく食べてしまって、はい終わり。その由来に思いをはせる機会はほとんどないけれど、たまには豆の気持ちになってみよう。

 そもそも豆とはこれから新たに芽を出し、植物体を作り出すための栄養貯蔵庫。動物でいえば卵にあたる。それゆえ生命の発生に必要な栄養素がすべて含まれている。豆自体がホールフード(生命を支える丸ごと食品)なのである。

 また、豆は人間にとっても家畜にとっても重要な食料であり、植物油、味噌、醤油など加工食品の材料にもなる。豆なしには人類の生存は考えられない。中でも、大粒のそら豆には、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン、ミネラル類がバランスよく含まれており、しかも油糧種子として知られる大豆やピーナツに比べてオイルの量は断然少ないので(100グラム当たりにして約10分の1)、低カロリーのとてもヘルシーな食材といえる。

 ここではすり流しでそら豆の香ばしさと甘味を楽しみ、普通は捨ててしまう皮も食べる工夫をして、さらにホールフードとしての特性を引き出した。皮は、食物繊維としても、ビタミンやミネラル源としても有用なのでぜひ残さず食べたい。

▽福岡伸一(ふくおか・しんいち) 1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。

※この料理を「お店で出したい」という方は(froufushi@nk-gendai.co.jp)までご連絡ください。

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