病み患いのモトを断つ

気温上昇でリスク増加 痛風の"真犯人"脱水を呼び込む生活

尿酸値は少々高くても大丈夫
尿酸値は少々高くても大丈夫(C)日刊ゲンダイ

 気温がグングン上昇している。日中は汗ばむ暑さで、仕事帰りのビールがウマい。そんな季節の変化で、クリニックに足を引きずってやってくる人がいる。痛風だ。ぜいたく三昧の食事がよくなく、“王様の病気”との異名を取るが、ぜいたくせずとも、酒を飲まなくても、発症する。何がよくないのか。聖路加国際病院内科名誉医長で、「西崎クリニック」院長の西崎統氏に聞いた。

「痛風を起こすのは血液中の尿酸で、その材料が食品や飲料に含まれるプリン体です。尿酸の基準値は7㎎/デシリットルで、それより高い数値はもちろんよくありませんが、7未満でも、痛風は発症することがあります。水分が少しずつ蒸発すると、そこに溶けた成分が析出するでしょう。あれと同じ原理。そう、脱水すると、尿酸が析出して、結晶化しやすく、痛風発作を起こすのです」

 尿酸値が高ければ、それだけ燃料が豊富で、発作時の“噴火”が激しくなる。尿酸値が基準値内の“安全圏内”でも、燃料がないわけではなく、“小規模噴火”は起こり得る。噴火の引き金を引くのが、脱水というわけだ。

 汗をかけば脱水する。それがこの時季に痛風発作が増えるゆえんで、脱水を起こす要因をいくつか重ねると、より発作リスクが高くなる。

「酒飲みなら、ビールに含まれるプリン体を気にするでしょう。プリン体の含有量は、通常のビールより地ビールの方が概して多く、紹興酒は通常のビールの2倍近い。焼酎やウイスキーなどの蒸留酒はほとんどゼロですが、すべてのアルコールは尿酸の合成を促進し、排泄を阻害するばかりか脱水を招く。だから、二重の意味でよくありません」

 それでも1回の飲み過ぎで発症することはないだろう。飲み過ぎでも何とかなるから、いつしか尿酸値を心配しなくなって、そこにもうひとつの脱水要因が重なると、ある日突然、激痛が。

「発汗ですよ。酒好きはビールをおいしく飲むために水分摂取を我慢する傾向がある。それは当然よくありません。下戸でも、砂糖や果糖を多く含むものをよく飲んだり、食べたりすると、いけません。どちらも、尿酸の合成を進めます。清涼飲料水や甘い物を好む人がよくないのは、そのためです」

■尿酸値は少々高くても大丈夫

 実は記者も13年前の真夏に発症。前の晩に紹興酒を1本飲み、翌朝、取材先に向かうべく歩いている途中に左足の親指がじわじわと痛くなってきた。

 いつもは水筒にお茶を入れて合間、合間に飲んでいたが、その日は忘れてしまった。前の晩の痛飲がたたって、朝食抜きだったから、酒を飲んでから水分摂取がないまま、炎天下を汗をかきながら歩き続けて脱水を重ねたのだ。

 その苦い経験で、いろいろ調べてビールより紹興酒がプリン体が多く、痛風によくないことを学んだが、紹興酒は多くの痛風予備群にとって盲点だろう。そこにちょっとした脱水要因が重なると危ない。水筒を忘れた記者は、コンビニを探したが、その日はあいにく取材の途中にコンビニがなくて……。

 会議や接客が重なったり、飲み物を買いたくても店がなかったりするなど、いろいろな事情で水分摂取ができなくなることは往々にしてある。ちょっとした水分摂取のロスと飲酒や発汗の脱水がダブルパンチとなって、痛風を呼び寄せる。

「逆にいうと、尿酸値が少々高くても、脱水せずに高値安定なら、痛風にはなりにくい」

 こまめな水分摂取。痛風予防は、とにかくそれが途切れないようにすることに尽きる。

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