ベテラン皮膚科医もお手上げ? 水虫は見た目で分からない

専門医でも見た目だけの診断は難しい
専門医でも見た目だけの診断は難しい(C)日刊ゲンダイ

 水虫の季節。水虫を何度も繰り返している人は、今年こそ気合を入れて治療に取り組んではどうか? 埼玉医科大学皮膚科教授の常深祐一郎医師に話を聞いた。

■なかなか治らないのは誤診も一因

 水虫がなかなか治らない理由は、ひとつは薬をきちんと塗れていないこと。足の指の間や足裏の水虫は市販薬でも十分に治すことができる。

 しかし、それは患部全体に正しく塗ることが大前提だ。たいていの人は、皮がむけている部分、ジュクジュクしている部分、かゆい部分だけに塗るが、それでは塗る範囲が狭い。

「感染症である水虫は、ある程度良くなればいいというものではない。白癬菌が残っていれば、再発します」

 もうひとつの理由は、爪にできる水虫、爪白癬を見逃していることだ。足の水虫は有名である上、分かりやすい症状があるので治療に結びつきやすいが、爪白癬は爪が白く濁るという症状なので放置されがち。「年のせい」「昔のケガのあと」だと思っている人もいる。

「爪白癬は初期であれば爪白癬用の塗り薬でも治療できますが、多くは飲み薬でないと完治しない。しかし、飲み薬の治療を受けていない人が珍しくありません」

 昨年、新しい爪白癬の飲み薬が発売された。現在、飲み薬は1993年発売の「イトラコナゾール」、97年発売の「テルビナフィン」、2018年発売の「ホスラブコナゾール」がある。

 新薬は、効果が高く、治療期間が短いのが注目すべき点だ。イトラコナゾールは治療期間が3カ月だが、効果が低い。これまで爪白癬治療の主流であったテルビナフィンは、期間は決められていないものの、およそ6カ月。一方、新薬のホスラブコナゾールは3カ月。

「効果もさることながら、大事なポイントは患者が治療を継続できるか。いい薬でも継続して使ってもらえなければそれまでです。塗り薬は1年塗り続けても20%しか治らず、少なくとも数カ月は爪に何の変化も見られないので、治療を継続できない人も多く、結果的に完治率が非常に低くなるのです」

 新薬の3カ月という治療期間も一見長く思うが、これまでと比べると大きな飛躍だ。家族に1人水虫がいれば、ほかの家族にもうつすことになる。可愛い娘や孫が、自分の足や爪からうつされた水虫で悩んでいるかもしれない。水虫の連鎖を断ち切らなければならない。

「爪白癬の飲み薬は副作用が懸念されていましたが、肝機能が低下している人も軽度の異常であれば飲み薬が可能。これまでは、塗り薬では効かない爪白癬の患者にも塗り薬が処方されてきた。塗り薬か飲み薬か適切に薬を選ぶことが重要です」

■診断には顕微鏡が必須

 ところで、爪白癬を含む水虫は、皮膚科専門医であっても「見た目」だけでは診断が難しいということをご存じか?

 常深医師は、爪白癬のほか、さまざまな爪の病気の写真100枚以上を皮膚科専門医に見てもらい、爪白癬かどうかをイエスかノーで答えてもらった。皮膚科専門医には、新米から30年以上の大ベテランまでいた。

「2択なので適当に答えても50点はいくテストで、70点ほどしかいかなかった。30年以上の大ベテランでも65%ほどの正解率でした。つまり、長年の治療経験があっても、見た目だけで診断するのは難しい。皮膚科専門医でそうですから、専門外の先生ではもっとそうですし、一般の人はなおさら」

 常深医師のもとに「水虫です」と言って来る患者の3分の1は、水虫以外の病気だという。水虫ではないのに水虫の薬を塗ったら、かぶれてひどいことになることも。

「顕微鏡で白癬菌の菌糸を確認することは不可欠。水虫の治療を受けているけど治らないという人の検査をしたら、水虫でなかったというケースはよくあります」

 今年こそ水虫とおさらばしよう。

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