後悔しない認知症

親にボケ防止習慣の無理強いすると逆にストレスになる

将棋や囲碁もいい(C)日刊ゲンダイ

 私の知人が自分の高齢の母親について興味深い話をしてくれた。95歳になる母親は彼の住まいから電車で10分ほどの場所で一人暮らしを続けている。週に1回、日曜日に彼は母親宅を訪れるのだが、ひとつだけ注意していることがあるという。それは母親が定期購読している新聞のことだ。「新聞がクシャクシャになっていれば安心。きれいに畳んだままなら要注意」だというのだ。知人は、もし母親が若いころから毎日隅々まで読んでいた新聞を読まなくなったら老化、認知症発症の兆しだと考えているという。つまり、新聞を読むか読まないかが母親の変化の尺度になっているわけだ。

 そんな彼女だから、彼が訪ねてくると決まって新聞で仕入れた新しい情報を話題にするという。

 最近も「日本では2025年には認知症が700万人になるそうだね。私は生きていないだろうけど……」などと、政府が発表した認知症対策の新聞記事から得た情報を披歴したそうだ。傍らには熟読したと思われるクシャクシャの新聞が置いてあったという。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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