がんと向き合い生きていく

「人生会議」の決定を逆転させるくらい医療は進歩している

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 いろいろ話し合って、息子もG医師もそれを了解しました。そしてG医師の勧めに応じ、Bさんは直筆で「延命治療はしない・がんになっても抗がん剤は使わない」という書面を残しました。

 Bさんの姉(86歳)も夫を亡くし、その後は姉妹2人でBさんの家で10年間仲良く暮らしてきました。姉の息子たちは結婚して離れて暮らしているとのことでした。

 がんの話題になると、いつもBさんは「私はG先生と息子とで話し合った。薬の治療はしないと紙に書いておいた」と姉に話し、姉は「分かった、分かった」と返事をしていました。

■「抗がん剤は使わない」と本人は書面に残していたが…

 今年に入って、Bさんに進行した肺がんが見つかり、手術は無理と判断されました。この時、すでに脳に転移が数カ所あり、新しく出来た地域の中核病院で全脳に放射線治療を受けました。その効果があって、脳転移はほとんど消えるほどに小さくなったのですが、放射線治療が終わった頃からボケた感じになってきました。認知症が悪化したのか? 放射線治療が影響したのか? 体はとても元気なのですが、話の理解が難しくなり、物事を自分で判断が出来なくなってきました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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