がんと向き合い生きていく

「人生会議」の決定を逆転させるくらい医療は進歩している

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 その後、中核病院の担当医から息子に「肺がんの遺伝子検査の結果が出て、ちょうどBさんに合った効く薬が分かりました」と連絡がありました。

 息子が病院を訪ねると、担当医は熱心に説明してくれたといいます。

「遺伝子検査でBさんに合った薬があって、効く可能性が非常に高いのです。肺がんの治療は10年前の5年生存率は数%だったのが、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が加わって、いまはその何倍にも増えています。治ったと思われる患者もいます」

 息子は「そんなに効く可能性が高いなら治療したい」と思って、Bさんの姉に相談しました。すると、姉は「あなたは一緒に暮らしていないからそんなことを言うが、私は『薬の治療はしない』と妹が話しているのをずっと聞いてきました。絶対、反対です」と、一生懸命に説明しても聞く耳を持ってくれませんでした。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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