人生100年時代の健康法

行ったり来たり…またも浮上した「卵とコレステロール問題」

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「糖質制限ダイエット」がブームです。私のまわりでも、チャレンジャーが何人か現れています。テレビや雑誌の広告などを見れば、効果を信じないわけにはいきません。いまや食の大きなトレンドになりつつあると言っていいでしょう。

 実際、医学的にも効果が認められています。糖質制限によって肥満が解消された、糖尿病が治った、血液の数値が良くなった、という研究結果が続々と出てきています。しかも炭水化物を減らしたからといって、なにか別の重大な病気になったという話は聞きません。

 その一方で、異をとなえる専門家も少なからずいます。糖質制限を行っている人は、むしろ寿命が短くなるといった研究結果が出ています。あるいは心臓病のリスクが高まるといった報告もなされています。

 この手の研究は、やり方次第で結果が百八十度変わることがあるので、もうしばらく動向を見定める必要がありそうです。ただメタボ体形の私としては、やっかみ半分で後者の見解を支持したい気持ちになるわけです。

 科学的にどちらに分があるのか分かりませんが、人類は穀物を食べてここまで繁栄してきたのだ、という事実は大きいと思うのです。

 そういえば卵問題も微妙になってきました。昭和の時代には、卵は栄養価が高いから積極的に食べるべし、といわれていました。

 ところが平成に入ると、血中コレステロールを上げる真犯人とされ、1日1個までといわれてしまいました。それがまた逆転し、いまでは卵と血中コレステロールは無関係、何個食べても大丈夫と、厚生労働省からお墨付きが出たほどです。

 しかし今年に入って、アメリカの有名な医学雑誌に、卵を食べると血中コレステロールが上がり、心臓病が増えるという最新研究の論文が発表されたのです。卵にとっては、2審で無罪を勝ち取ったのに、検察側の上告で、また法廷に呼び戻されたようなもの。なんだか可哀想になってしまいます。

 このように、食にまつわる健康情報は行ったり来たり。そのたびに我々も右往左往させられます。「いい加減にしてくれ」と言いたくなるのは私だけではありますまい。このカオスは、いったいいつまで続くのでしょうか。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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