難治性うつ病・そううつ病の新治療 注目「rTMS療法」とは

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 今年6月、薬が効きづらいうつ病への新治療「rTMS療法」が保険適用になる。さらに注目されているのは、rTMS療法の双極性障害(そううつ病)に対する効果だ。この治療の研究を行う東京慈恵会医大精神医学講座准教授の鬼頭伸輔医師に話を聞いた。

 rTMS療法では、リクライニングチェアに座った患者の頭に専用コイルを当て、磁気刺激を繰り返し与える。

 磁気刺激がうつ病やそううつ病に関係する脳の前頭前野の血流量を変化させ、脳の神経ネットワークを修復する効果がある。

 うつ病の場合、10ヘルツの頻度で左前頭前野を刺激。1回の治療時間は約40分。週5日、4~6週間続ける。

「中等症以上のうつ病の約30%は薬が効かないといわれています。こういった患者さんにrTMS療法を用いると、薬物療法を併用しない二重盲検(治療内容を医師も患者も不明で行う試験)での寛解率、つまりうつ症状がなくなる率は15~20%、薬物療法を併用した非盲検(治療内容を医師も患者も分かって行う試験)での寛解率は30~40%です」

 うつ病評価スコアで5割以上改善する奏功率は50~60%。保険適用となることが示しているように、画期的な治療として期待が高まっている。

 一方、双極性障害は今年3月、鬼頭医師が2017年まで在籍していた国立精神・神経医療研究センター、慈恵会医大付属病院、慶応義塾大学病院、京都府立医科大学付属病院の共同で先進医療の実施が決まった。

 本格的始動は6月ごろ。対象は、「既存のそううつ病の治療を受けても十分な効果が見られない」をはじめ、いくつかの項目に該当する患者だ。

「うつ病に効くのだから双極性障害にも効くだろうという考えが経験上ありました。ところがうつ病と双極性障害の患者をまとめて有効性を調べた研究はあるものの、双極性障害だけに限ったものはありませんでした」

 そこで鬼頭医師は15年、薬が効かずうつ状態が続く双極性障害4人にrTMS療法を週5日、4週間行った。3人は4週間の間にうつ病評価スコアが劇的に改善し、1人は効果がなかった。

 効果があった3人のうち2人は、rTMS療法を終えた後も効果が持続。半年後も有効性が確認された。効果がなかった人も含め、rTMS療法でそう状態になる人は皆無。これらの結果を鬼頭医師は論文にまとめ、今回の先進医療スタートへつながった。

■治療を終えた後も効果が持続

「rTMS療法は、うつ病と同様に双極性障害に対しても画期的な治療法だと考えています」

 というのも、うつ病は治療薬が約20種類あるが、双極性障害は、日本うつ病学会のガイドラインで推奨されている薬は4種類で、承認されているのは、このうち2種類だけ。治療の選択肢が非常に少ないのだ。

「うつ症状とそう症状を繰り返す双極性障害は、うつ症状をどう解決するかが最大のポイント。なぜならうつ症状が良くならないケースが多く、双極性障害の患者さんは人生の半分をうつ状態で過ごすという研究結果が出ているからです」

 rTMS療法は、薬は服用したまま受ける。これまで服用していた薬はうつ状態改善には効かないが、再発・再燃に関しては効果が期待できるからだ。

 双極性障害を対象とした先進医療では、偽刺激を対照として、その有効性と安全性を検証する。

 1ヘルツの頻度で右前頭前野を刺激。週5日、4週間続ける。1回の治療時間は約30分。

 このrTMS療法は、統合失調症、脳卒中後のリハビリ、軽度認知障害、アルツハイマー型認知症などの治療にも効くのではないかと、研究が行われている。

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