手術は基本的に人工血管置換術を行います。解離した血管を外して化学繊維でできた人工血管に取り換えるのです。脊椎の左側を下方向に走行している下行大動脈が解離を起こしている場合は、これまではなるべく手を付けずに保存的な治療が行われてきましたが、いまは血管内にステント(金属製の筒)を入れる治療が登場しています。ただ、このステント治療はまだ十分なエビデンスがありません。医師の技術レベルや経験による差も大きいので、どこでもできるような治療とはいえないのが現状です。
■施設に不足している点が客観的な数値でわかる
冒頭で紹介した「診療の質指標」は、こうした施設による治療レベルの差を小さくして、救命率を改善させるための一手になるでしょう。今回のような新しい解析は、「リアルワールド」と呼ばれる実際の現場からのデータを基にしたものなので説得力があります。指標を参考にすれば、施設によって「ウチはこの部分が足りないんだな」ということがわかり、具体的な改善につながるのです。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」