運動は認知症の予防や改善に役立つか? 専門家に聞いた

同時に2つ以上のことをするトレーニング

「手続き記憶は手足を動かすことで記憶の回路が強化されるため、運動で記憶は強化されるでしょう。しかし、運動で人の顔を覚えるなど他のパターンの記憶も保持されるのか、という点については分かりません」

 複雑な道を走るロンドンのタクシー運転手の海馬の灰白質(記憶にかかわる脳の領域)は年をとっても衰えず、成長しているという。

 だから運転は認知症予防にいいのではないか、と考える人もいるだろう。

 しかし、それは運動が関わる記憶を強化させているだけで、言葉などの認知機能全般をアップさせるわけではない。

「言葉の意味や物の名称などの一般的な知識や常識に関する記憶に『意味記憶』があります。これが障害される認知症が意味性認知症です。この病気を発症されたタクシーの運転手は、車を運転してお客さんを目的地に運ぶことができるのですが、車を運転する際に握るものを聞かれて、ハンドルと答えることができませんでした。記憶はカテゴリーによってある程度脳の働きが分かれている。運動すればある程度脳は鍛えられるのでしょうが、意味記憶まで保たれるか、といえば必ずしもそうではないのではないかと思います」

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